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大阪高等裁判所 平成2年(ネ)2014号 判決 1991年6月20日

控訴人(第一事件被告・第二事件原告) 株式会社ノバ

被控訴人(第一事件原告・第二事件被告) 株式会社オーケー模型

被控訴人(第一事件原告) 株式会社キソパワーツール

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の申立て

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2  (原審昭和六二年(ワ)第三八八七号事件〔以下「第一事件」という。〕について)

被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

3  (原審昭和六二年(ワ)第九〇〇七号事件〔以下「第二事件」という。〕について)

被控訴人株式会社オーケー模型は控訴人に対し、金八〇万円及びこれに対する昭和六〇年一一月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(これは、当審において請求を減縮したものである。)。

4  訴訟費用は、第一、第二審を通じ被控訴人らの負担とする。

5  仮執行の宣言

二  被控訴人ら

主文同旨

第二当事者の主張及びこれに対する当裁判所の判断

当裁判所も、第一事件については、差止請求権不存在確認を求める被控訴人らの訴えは不適法として却下し、被控訴人らの虚偽事実陳述流布行為差止請求及び被控訴人オーケー模型の損害賠償請求は理由ありとして認容し、被控訴人キソパワーツールの損害賠償請求は理由なしとして棄却すべきものであり、第二事件については、控訴人の請求は理由なしとして棄却すべきものと判断するものであるが、その当事者の主張及びこれに対する当裁判所の判断は、次の一ないし九のとおり付加訂正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第二ないし第四(但し、末尾の「(結論)」の部分を除く。)記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決五枚目表一〇行目ないし一一行目(知裁集二二巻三号五七八頁一二・一三行目)の「原告株式会社木曽製作所(以下「原告木曽製作所」という。)」を「被控訴人キソパワーツール(平成二年四月一日商号変更前の旧商号・株式会社木曽製作所。以下「被控訴人キソパワーツール」という。)」に、六枚目表一行目ないし二行目(同上、五七九頁四・五行目)の「イ号物件(一)ないし(五)について警告をした。」を「実用新案法一三条の三第一項所定の警告をした。」に各改め、三行目(同上、同頁六行目)の「・販売先への通知」を削り、八行目の「掲載し」から一二行目(同上、同頁九ないし一一行目)の「弁論の全趣旨)。」までを「掲載した(弁論の全趣旨)。」に改める。

二  原判決七枚目裏四行目(同上、五八〇頁九行目)の「昭和六〇年」を「昭和六一年」に改め、一〇行目(同上、同頁一三行目)の「本件第二事件を」の次に「千葉地方裁判所松戸支部に」を、同行の「なお」の前に「同裁判所昭和六一年(ワ)第五五九号。」を各加え、一二行目(同上、同頁一四行目)の「同年」を「昭和六三年」に改める。

三  原判決八枚目表一二行目ないし末行(同上、五八一頁四行目)の「、原告らの販売先に対する本件通知」を削り、同裏一二行目(同上、同頁一一行目)の「提起した。」を「大阪地方裁判所(原審)に提起した(昭和六二年(ワ)第三八八七号。これに伴い、第二事件は、昭和六二年九月四日、被控訴人オーケー模型の申立てに基づき大阪地方裁判所(原審)に移送され、同裁判所昭和六二年(ワ)第九〇〇七号事件となり、第一事件に併合して審理されることになった。)。」に改め、九枚目表七行目(同上、同頁一七行目)の次に改行して「更に、控訴人は、第二事件の金員請求についても、当審において、前記第五項4の合計五一〇八万八二〇〇円の内金八〇万円と遅延損害金の請求に減縮した。」を加える。

四  原判決一七枚目表末行(同上、五八八頁九行目)の「限度」を「限定」に、同裏三行目(同上、同頁一〇行目)、一二行目(同上、同頁一五・一六行目)の「圧着」をいずれも「圧接」に、三行目ないし四行目(同上、同頁一一行目)の「移動するものを」を「移動するのを」に各改める。

五  原判決二三枚目裏五行目ないし六行目(同上、五九三頁六行目)の「イ号物件(一)ないし(四)は、いずれも本件考案を間接侵害する物でない」を「イ号物件(一)ないし(四)の製造、販売はいずれも本件実用新案権の間接侵害行為にあたらない」に改め、七行目の「及び」から八行目(同上、同頁七行目)の「本件通知」まで及び一一行目(同上、同頁九行目)、一三行目(同上、同頁一〇行目)、二四枚目表一行目(同上、同頁一一行目)、二行目(同上、同頁一二行目)、二五枚目表一〇行目ないし一一行目(同上、五九四頁一一行目)、一二行目(同上、同頁一二行目)の「・通知」をいずれも削り、二三枚目裏末行(同上、五九三頁一一行目)、二四枚目表四行目(同上、同頁一二・一三行目)、六行目(同上、同頁一四行目)、同裏二行目(同上、同頁一八行目)、五行目(同上、五九四頁二行目)、二五枚目表一〇行目(同上、五九四頁一一行目)、末行(同上、同頁一二行目)、同裏四行目(同上、同頁一四行目)の「原告木曽製作所」をいずれも「被控訴人キソパワーツール」に改める。

六  原判決二四枚目表四行目(同上、五九三頁一三行目)、二五枚目表末行(同上、五九四頁一二行目)の「に対して」をいずれも「にも」に改める。

七  原判決二四枚目表一〇行目ないし一一行目(同上、五九三頁一六行目)の「掲載し、同原告の販売先に同趣旨の本件通知をしたこと」を「掲載したこと」に、同行ないし一二行目(同上、同頁一六・一七行目)の「イ号物件(一)ないし(四)は本件考案を間接侵害する物である」を「イ号物件(一)ないし(四)の製造、販売は本件実用新案権の間接侵害行為にあたる」に、同裏七行目(同上、五九四頁三行目)の「本件考案」を「本件実用新案権」に、二五枚目表二行目(同上、同頁七行目)の「本件考案を間接侵害」を「本件実用新案権の間接侵害を構成」に、四行目ないし五行目(同上、同頁八・九行目)の「掲載し、原告オーケー模型の販売先に本件通知をした」を「掲載した」に各改め、同裏八行目ないし九行目(同上、同頁一七・一八行目)の「、本件通知の通知先が外国法人であること」、一〇行目(同上、同頁一八行目)の「及び本件通知」をいずれも削る。

八  原判決二六枚目表二行目ないし三行目(同上、五九五頁四行目)の「イ号物件(一)ないし(五)は、いずれも本件考案を間接侵害する物でない」を「イ号物件(一)ないし(五)の製造、販売はいずれも本件実用新案権の間接侵害行為にあたらない」に改める。

九  (当審における控訴人の争点についての主張とこれに対する当裁判所の判断)

当審において、控訴人は争点について次のような主張もするが(被控訴人らはこれを争う。)、以下のとおりいずれも採用することができない。

1  控訴人は、本件考案の「実用新案登録請求の範囲」に記載の構成要件は、模型レーシングカーのエンジンを始動させる時のスターターの状態を説明的に記述したものであり、被控訴人らのイ号物件(一)ないし(四)の各スターター(カー用ゴム環を係止する停止縁つきの円筒部と一体となった回転子を装着したスターター)を使用して模型レーシングカーのエンジンを始動させる時は停止縁より一段と大径のゴム環をその円筒部に嵌合固着させる必要があり、その時の構成要件は、本件考案の模型レーシングカー用スターターと全く変わるところはないのであり、イ号物件(一)ないし(四)の各スターターの構成要件についての被控訴人らの主張は、実はそれらが販売される時点における商品構成をあたかもエンジン始動時の構成要件であるかのようにすり替えて主張するものにすぎない旨主張する。

右控訴人の主張は必ずしも明確でないが、もし、イ号物件(一)ないし(四)の各スターターを製造、販売すれば、その購入者(消費者)がこれを模型レーシングカー用スターターとして使用する(被控訴人らが業としてイ号物件(一)ないし(四)の各スターターを模型レーシングカー用スターターとして使用しているとの主張、立証はない。)時点では本件考案の構成要件を充足するから右製造、販売は本件実用新案権を侵害するものであるという主張であるとすれば、本件考案が「前記円筒部には停止縁より一段と大径のゴム環を嵌合固着してなる」という(5) の構成を必須の構成要件とするものであることを無視するものであり、イ号物件(一)ないし(四)が右(5) の構成を欠く以上その製造、販売は本件実用新案権の侵害とはならないといわざるをえないし、もし、被控訴人らがイ号物件合体物、すなわちイ号物件(一)ないし(四)にイ号物件(五)を嵌合固着させた物を製造、販売しているから本件実用新案権の侵害になるという主張であるとすれば、被控訴人らがイ号物件合体物を製造、販売している事実を認めるに足りる証拠はないから、右主張は前提を欠き理由のないことが明らかである。

2  控訴人は、「イ号物件(一)ないし(五)はいずれも本件考案に係る物品の製造にのみ使用される物」ということはできないのであって、イ号物件(五)は必ずイ号物件(一)ないし(四)のいずれかに嵌合固着して使用されるものであるという解釈は誤りであり、イ号物件(五)のカー用ゴム環は、イ号物件(一)ないし(四)のほか、控訴人製のスーパースターター、こうべ技研製スターター、米国サリバン社製ハイトルクスターターなどの電動スターターに嵌合固着できるものであり、加えて、イ号物件(五)と同形、同寸法のカー用ゴム環が控訴人やこうべ技研などからも販売されており、また、イ号物件(一)ないし(四)は、模型レーシングカーのほか各種の模型のエンジンを始動させるために使用されるものであり、どのような組合せになるのかは結局最終ユーザーの好みに委ねられているとも主張するが、これは、控訴人が原審において展開した間接侵害の主張を自ら否定し、これが成り立たないことを自ら認めることにほかならない。

3 控訴人は、また、イ号物件(一)ないし(四)は、本件考案の模型レーシングカー用スターターに装着の回転子と全く同じ構造を有し、しかも、本件考案の目的とする模型レーシングカー用に供せられるから本件実用新案権を侵害していることは明らかであるとも主張するが、これは、前記説示のとおり本件考案が「前記円筒部には停止縁より一段と大径のゴム環を嵌合固着してなる」という(5) の構成を必須の構成要件とするものであることを無視するものであって、採用することができない。

控訴人のその余の主張を検討しても、被控訴人らによるイ号物件(一)ないし(五)の製造、販売が本件実用新案権の侵害(間接侵害を含む。)になるということはできない。

第三結論

よって、以上と同旨の結論の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して注文のとおり判決する。

(裁判官 潮久郎 鐘尾彰文 水野武)

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